この作品の英語タイトル、Lessons for Restoration は、日本語では「修復のレッスン」という意味です。15世紀ごろに北イタリアで発生したルネッサンスにより遠近法は確立しましたが、それが日本に入ってきたのは19世紀のことでした。それ以前は「吹き抜け屋台」という、遠近法ではなく平面的に空間を把握する眼で日本の絵師たちは絵画空間を構成しました。日本の近代化により私たちの眼は遠近法に慣れ、いちど習得してしまった「見方」はなかなか眼から離れてくれません。人間は何かを学習してしまうと、学習する前には戻れないのです。
この作品は「遠近法的絵画空間」と「吹き抜け屋台的平面的絵画空間」のどちらもを、同一平面上に実際に作り出すことを狙いとしています。遠近法的な空間を見ようとすると平面的空間が邪魔をし、逆も然りです。私たちは一度身につけてしまった「見方」を修復することができるのだろうか?絵画空間の問題のみならず、日本の近代化によってもたらされた文化的背景の比喩も多分に含めつつ、この作品を制作しています。
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Ute Klein