Reference

Outside of Modernism(2004年 Art Court gallery 個展 プレスリリースより)

中井康之(国立国際美術館学芸員)

 それは絵画でもなく、彫刻でもない。しかし、いわゆる工芸作品ではない。とはいえ、彼女はまぎれもなく芸術作品を作っているのである。人は絵画の形式を問い、彫刻の出自を問い、工芸の伝統を問う。それに対し、彼女の作品はそのような既存の枠組みからなる「構築物(テキスト)」を解きほぐすような佇まいを見せるのである。

 観察する者は、それを絵画と了解し、彫刻的空間を見出し、工芸を構成する素材として認識する。しかし、彼女はイリュージョンに対する異議申し立てをしているのでもなく、量感を排除した空間を構成する訳でもなく、工芸の伝統性への反旗を翻しているわけでもない。しかしながら、彼女は確かに新しい「芸術作品としての形」を作りだそうとしているのである。