左は明治時代・大阪の迎賓館「泉布観」、右は令和時代の迎賓館(藤本壮介氏によるデザイン監修)。それぞれに配置されるのは、樹下動物文と連珠文を表す二つの上代裂である。上代裂には、7〜8世紀頃にシルクロードを経由して伝えられた西方文様の影響が色濃く見て取れる。迎賓館に掛けられたこの二つの織物は、古代、近世、現代という悠久の時を経た日本の外交の軌跡を表している。
極東の島国である日本が、どのように世界に開き、外交をしていくのかという葛藤を表すかのように、二つの織物は敢えて「織り途中」である。明治と令和、それぞれの織り糸は左右を行き来して部分的に繋がり、それぞれの構成要素を分かち合う。
この織物は川島織物セルコンにより、伝統的な手織り技法「綴織」で織られている。織物職人が一時的に作業を止める際、「杼」を白い経糸に挟むことがあるが、その状態も再現する。
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【万博迎賓館のための作品制作に寄せて】
閉じていた日本が開き、開いたようで未だ閉じたままの部分がある日本が再び「万博」を開催する。史実に記録されない「人間の未知なるものへの好奇心」や「他者へ開くことへの勇気」の集積が、我々の現在をつくった。鎖国から開国。明治。そして令和へ。言語化されないエネルギーの鼓動をわずかに感じるモチーフを丁寧に選びとり、「完成されない」ものとして仕上げる。
世界の人々が集結する2025年日本国際博覧会の迎賓館にて、これらの織物に散りばめられたモチーフが「謎解き」のように、あるいは夜空に浮かぶ星座のように立ち現れ、人々の想像力と言葉を引き出すことを願っている。

